万葉集

103番

我が里に 大雪おおゆき降れり
大原おおはらの りにし里に 降らまくはのち

私のいる明日香の里に大雪が降った
お前のいる大原の古びた里に降るのは もっと後になるだろう

天渟中原瀛真人天皇あまのぬなはらおきのまひとのすめらみこと(天武天皇)

104番

我が岡の おかみに言ひて 降らしめし 雪のくだけし
そこに散りけん

この里の龍神に頼んで降らせた雪のかけらが
そちらへ散ったのでしょう

藤原夫人ふじわらのぶにん(五百重娘いおえのいらつめ)

105番

我が背子せこを 大和やまとると
夜深よふけて 暁露あかときつゆに 我が立ち濡れし

私の愛しい人が大和へ行くのを見送っていると
夜も更け やがて明け方の露に濡れるまで 私は立ち尽くしてしまった

大伯皇女おおくのひめみこ

106番

二人けど き過ぎがたき 秋山を
いかにか君が ひとり越ゆらん

二人で行ってさえ越え難い秋山を
どのようにして あなたは一人で越えているのだろう

大伯皇女おおくのひめみこ

141番

岩代いはしろの 浜松がを 引き結び
さきくあらば また帰り見ん

岩代いわしろの浜松の枝を結び合わせて無事を祈り
もし幸いにも無事でいられたなら また帰りに見ることもあるだろう

有間皇子ありまのみこ

142番

いえにあれば に盛るいい
草枕くさまくら 旅にしあれば しいの葉に盛る

家にいたならば 器に盛り神に手向ける飯を
草を枕とする旅の今は しいの葉に盛るのである

有間皇子ありまのみこ

147番

あまはら け見れば
大君おおきみの 御寿みいのちは長く 天足あまたらしたり

広大で神聖なる大空を見上げると
天皇の御命は天空に満ち足りている

倭大后やまとのおおきさき

163番

神風かんかぜの 伊勢の国にも あらましを
何しかけん 君もあらなくに

神風の吹く伊勢の国にいればよかったものを
何故来てしまったのだろう あなたもいないというのに

大伯皇女おおくのひめみこ

164番

見まくり がする君も あらなくに
何しかけん 馬疲るるに

会いたいと思うあなたもいないというのに
何故来てしまったのだろう 馬が疲れるだけなのに

大伯皇女おおくのひめみこ

165番

うつそみの 人なるれや
明日よりは 二上山ふたかみやまを 弟世いろせと我が見ん

現世の人である私は
明日から 二上山を私の弟として見ようか

大伯皇女おおくのひめみこ